東西落語名人選
2006/9/23 @神戸文化ホール 中ホール
【昼の部】
- 柳亭 市馬 「高砂や」
- 笑福亭 福笑 「釣道入門」
- 柳家 小三治 「錦の袈裟」
- 桂 春團治 「親子茶屋」
―― 中入り ―― - 桂 三枝 「天満の白狗」
- 桂 歌丸 「井戸の茶碗」
【夜の部】
- 柳亭 市馬 「片棒」
- 桂 歌丸 「火焔太鼓」
- 桂 春團治 「寄合酒」
- 桂 三枝 「鯛」
―― 中入り ―― - 笑福亭 福笑 「葬儀屋さん」
- 柳家 小三治 「一眼国」
※ 第 32 回
小三治師匠を近場で観られる機会!ってことで、昼夜通しでチケットを確保。かなり楽しみにしていた会です。当日は天候にも恵まれ、遠方ながらピクニック気分で会場へ。
当日券も出ていましたが、キャパ約 900 の客席はほぼ満席。チケットをあらためて見て「第 32 回」の歴史に重みを感じつつ、こんな機会を得られてありがたいです。
昼夜とも開口一番の市馬。軽やかで端正な語り口に好感。昼の部の「高砂や」は、冠婚葬祭に疎い男が婚礼の仲人をやることになり、ご隠居に謡曲の「高砂」を教えてもらうが‥‥って噺。素人ながら粋なご隠居と、しどろもどろになる八五郎の対比がおもしろい。
夜の部は「片棒」。この噺は雀松でしか聴いたことなかったが、自分の死後が気になる旦那の、前半のガックリ感と、後半のウキウキ感の対比がおもしろい。
昼夜とも小三治の前の福笑。こちらは爆笑に次ぐ爆笑で。昼の部の「釣道入門」は「ギョエ!」と「おっとっとっと~、ま~た釣~れた~!」のしつこい繰り返しが強烈。
夜の部の「葬儀屋さん」で、「そうや、葬式やったら祝儀入んねや!」のセリフにはやっぱり客席から「祝儀!」のツッコミが。(関西ゆえ?)
三枝は昼夜ともマクラで天満天神繁昌亭の報告。昼の部の「天満の白狗」は「元犬」の改訂版。基本プロットはそのままに、クスグリを大量投入。これは従来の噺と置き換えても良い仕上がり。
夜の部は中トリでオリジナルの「鯛」。活け魚料理屋のいけすの魚たちのサバイバル。漫画的でたのしい。死にかけの泳ぎ方をする場面では、足がつりそうになるハプニングも。
歌丸は安定感抜群。昼の部はトリで「井戸の茶碗」。屑屋を介して手に入れた仏像の中から五十両という金が出てきた。買った男は「仏像は買ったが中の金は買った覚えがない」、売った男は「仏像を売った時点でその金とは縁が切れている」と、双方受け取らない‥‥と云う、上方ではまずあり得ない展開の噺。微妙な人物描写を丁寧に。
夜の部は「火焔太鼓」。道具屋の仕入れてきた古ぼけた太鼓が高値で売れる噺。この噺は坊枝でしか聴いたことなかったが、落ち着いた印象は貫禄からか。
いつもながら貫禄の春團治。昼の部は中トリで「親子茶屋」をたっぷりと。狐つりの場面では、別に用意した紫の小振りな扇子で粋に。
夜の部は中トリ前に「寄合酒」を軽めに。前半でやや乱れるも、持ち寄った食材を料理にかかる後半はしっかりたのしい。
この日いちばんのお目当て、小三治はマイペースで飄々と。前の福笑との対比で、それぞれが醸し出す空気感の違いがまたおもしろい。
昼の部のマクラは、アメリカへ渡って音信のなかった友人から突然来た手紙に「生きてますか?」と書いてあった話。読んでるうちに死んだ気になってきて、「死後ですからねぇ、適当でイイんです」。ネタの「錦の袈裟」は与太郎の天然のぼんやり具合が絶妙。
大トリの夜の部、マクラは神戸の印象。ネタの「一眼国」は、一つ目の子供がいたと云う噂を聞きつけた香具師がその一つ目を捕まえに行く‥‥と云う噺。《大ザル小ザル》《ベナ》《六尺の大イタチ》などの見世物小屋が並ぶ、「軽業」のようなくだりも。やや怪談めいた展開からのサゲが効果的。
いやぁ、やっぱり小三治師匠のフラって云うんですか、独特の雰囲気はやっぱり良いですねぇ。ゆる~く引き込まれました。
小三治師匠もさることながら、ほかのみなさんも十分に堪能。たしかに 1 階席 4,800 円は高いようにも思いますが、6 人が 6 人ともトリを取れる噺家さんですから、それをたっぷり聴けたことを考えると贅沢な会でした。
上手い人になると、江戸も上方もないですね。おもしろいものはおもしろい。とくに小三治師匠にはぜひ繁昌亭で主任をしてもらいたいです。そうなったら 1 週間‥‥。
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