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鈴本余一会 柳家小三治独演会

2007/10/31 @鈴本演芸場

  • 柳家ろべえ 「たけのこ」
  • 柳家三三 「五目講釈」
  • 柳家小三治 「百川」
    ―― 中入り ――
  • 柳家〆治 「お菊の皿」
  • 柳家小三治 「鰍沢」

※ 第五十九回/最終回


 まず 2 か月さかのぼります。
 8/31、横浜での 『ワールドコン』 から帰り、翌日 9/1 に今回のチケットを買うためチケットぴあへ。近所の店舗がなくなったんで、大阪へ出て買わねばなりません。
 万難を排して始発で行くも、すでに 20 人弱の列が。ひとりをのぞいて全員女性。「こらあかん‥‥」と思いつつも、このあと 『彦八まつり』 に行くつもりだったんで帰るものどうかと思い、とりあえず列ぶことに。
 そして 10 時。「ただただ待ってるだけではあかん!」と、携帯サイトでの発券に挑戦。これがまた遅々として進まず。
 1 分後、店員さんから「『○○』は完売しました」とのアナウンス。ジャニーズ出演の演劇だったらしく、ここでほとんどの女性が脱落。
 2 分後、携帯サイトでは枚数を入力して申し込みボタンを押すところまで進む。と、その直後、名前を呼ばれる。動揺を隠しきれず。
 3 分後、発券作業中にも携帯サイトにアクセスしつづけるも、こちらは 2 度ほどタイム・アウト。そのとき店員さんから「ご用意できました」のお言葉。思わず「ありがとうございます!」と力一杯の返事が口をついて出てました。
 そして、出てきたチケットがなんと 3 列目! 奇跡としか云いようがありません。その日はどうもサッカーの重要試合のチケット発売と重なってて、関東はそれで回線が飽和してたようです。

 で、今回の密航も「ぷらっとこだま」でビール片手にのんびり移動し、17 時頃に JR「御徒町」駅に到着。時間もあったんで、アメ横をブラブラしてみました。さすが名を馳せた商店街だけあって、活気がありますね。
 マクドで腹ごなしし、会場前で N さんと合流して入場。もちろん前売り完売で、立ち見のお客さんも。それよりも、カメラがたくさん入ってて、そっちの方が気になりました。ひょっとすると、ドキュメンタリー番組があるのかも。
 プログラムを見ると、小三治師匠は中トリとトリで、中トリの「百川」だけがネタ出し。トリは「おはなし」となってました。(ほかの出演者は「落語」) こりゃもう、誰しも「最後はたっぷり《ま・く・ら》や」って思いますよね。


 前回につづいて、今回もろべえがトップ。かなり緊張気味だったが、それでも噺の「たけのこ」に入るときっちり。隣から生えてきた筍をめぐって、隣家との間を行ったり来たり。一往復少なかったようだが、時間の都合?

 つづく三三はあまり頓着してないようで、マイペースな印象。今夏の浴衣事情をマクラに「五目講釈」へ。居候が講釈師になると云い出し、試しに一席演ってみるって噺。最初は「赤穂義士伝」を語り始めるも、途中からムチャクチャに。時事ネタやらなんやらてんこ盛りで、しかもそれがテンポ良く繰り出されるのが心地良い。

 小三治の 1 席目は、江戸の祭りと四神旗・四神剣の話から、ペリー来航の話をはさんで「百川」へ。田舎から出てきた百兵衛が料亭「百川」で働くことになるも、ひどい田舎弁で客との会話がことごとく食い違う。客の威勢の良さと百兵衛のぼんやり具合との切り返しがお見事。客に呼ばれたときの百兵衛の「うぅ~ひぇっ」って返事がなんともかわいい。

 中入りをはさんで、〆治は怪談の小咄をマクラ代わりに「お菊の皿」(上方の「皿屋敷」)をごくごく軽く。

 小三治の 2 席目は、仏教宗派の人気事情から、日蓮宗の総本山がある身延山、その近くにある句碑の里の話へとマクラをつなぎ、さらにその奥の「鰍沢」へ。
 雪の鰍沢で遭難しかかった旅人が、ようやく見つけた人家に宿を求める。そこに住んでいたのは、かつてあこがれた花魁と云う偶然。すすめられるままに卵酒を飲むと、疲れからすぐに寝入ってしまう。酒を買いに行った花魁と入れ違いに帰ってきた花魁の男が、冷めた卵酒を飲むとこれが毒入り。それを知った旅人は逃げ出す。追う花魁。
 笑いはほとんどなく、旅人の心情描写を軸に、偶然と運命、情と非情を淡々と、それでいて豊かに。ラストの、雪深い絶壁での緊迫感から、あまりにばかばかしいサゲへ、急転直下の緊張と緩和。
 小三治が描ききった落語世界に引き込まれた 1 時間。


 「百川」が 40 分、「鰍沢」が 60 分。たっぷりの《ら・く・ご》を堪能。
 最後だからと特別なことをせず、小三治師匠が出せる最高のカードを切ってきた、そんな印象でした。お得意のたっぷりマクラもなく、噺のためのマクラから本編へと云うスタンダードな構成が、逆に特別な会であることを感じさせました。
 22 年間続いたこれまでの 59 回の余一会を振り返る、なんてのは安易すぎる。それよりも、22 年間で培ってきた落語を高座で披露することで、お客さん自身に 22 年と云う年月を感じ取ってもらおう。そんな風に思われたのかもしれません。

 降りた緞帳のむこうから手締めが聞こえてきました。


 この会にしてはめずらしく 21 時過ぎの終演。その後、岐阜から密航されてた H さんと合流。さらに H さんと顔見知りの方々とも合流し、N さんもまじえて酒宴に。落語を肴におおいに盛り上がりました。
 私はその日の夜行バスを手配してたもんで、宴席を中座。後ろ髪引かれる思いで家路に。

鈴本演芸場

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出前・田辺寄席

2007/10/28 @御影公会堂

  • 桂文太 《開口 0 番》
  • 笑福亭たま 「いらち俥」
  • 桂米左 「阿弥陀池」
  • 桂文太 「稽古屋」
    ―― 中入り ――
  • 内海英華 《女道楽》
  • 桂きん枝 「狸の賽」

※ 第 10 回


 阪神・淡路大震災の被災者を元気づけようとつづけられている『田辺寄席』の出前版。会場の御影公会堂は古い建物ですが、なかなかええ雰囲気です。
 1 階フロアーにザッと 300 人ほど入り、2 階にもお客さんがあふれる盛会に。近所の人が多い印象でしたが、無料と云うこともあって落語ファンも多く詰めかけてました。


 好例の文太の開口 0 番は、震災直後の思い出に笑いをまじえて。

 トップのたまは偽装問題をマクラに、得意の「いらち俥」。最初の俥屋はちょっとも動けん(動かん?)まま 10 銭せしめ、次の俥屋は箕面からの帰りに市電と激突して飛んで行く。あいかわらずのアクション落語。激突時のスローモーションはわかりにくかった?

 つづく染左は自虐的マクラから「阿弥陀池」を。安心して聴いてられるスタンダード・スタイルできっちりと。

 中トリの文太に「待ってました!」と声が掛かる。定番の稽古屋の師匠のほめ方をマクラに「稽古屋」へ。モテない男が「芸はないのか?」と問われれば「冷たい水飲んで温い小便しまんねん」。蛍踊りでは身体中に墨を塗らず、コールタールを塗る。後半の稽古屋での風景、文太の語り口が稽古屋の師匠の雰囲気にぴったり。たっぷり賑やかに。

 中入りをはさんで、英華がしっとり艶やかに三味線漫談。

 トリのきん枝は、繁昌亭裏話や月亭八方も登場する阪神タイガースの話など、うだうだをたっぷり。十分に繰られたネタをきん枝節に乗せ、これがなかなかにおもしろい。
 風邪気味で落語を演るかこのまま降りるか逡巡するも、観念して「狸の賽」を。ちょこちょこと端折られてはいるものの、賭場の雰囲気に得も云われぬリアリティーが。


 5 席+αで 2 時間ちょっとと、コンパクトにまとまった会でした。落語もそれぞれ異なったカラーで、そこへ英華さんが華を添えて、良い番組だったと思います。きん枝さんのしゃべりってわりと好きなんで、ひさしぶりに観られて良かったです。

田辺寄席

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染左開発計画

2007/10/27 @ワッハ上方レッスンルーム

  • 笑福亭呂竹 「寄合酒」
  • 林家染左 「牛ほめ」
  • 笑福亭遊喬 「胴切り」
  • 林家染左 「始末の極意」
    ―― 中入り ――
  • 林家染左 「小倉船」

※ 第 30 工区


 最近観た何度かの高座でメキメキ腕を上げた感があったんで、期待してひさびさに染左さんの会へ。が、こちらの期待とは裏腹に、入りはちょうど 30 人とさびしい入り。


 開口一番は「女風呂の《呂》に竹輪の《竹》で呂竹」。軽いマクラから「寄合酒」へ。基本どおり丁寧に。飲み会を仕切る男(ツッコミ役)の困り具合がええ感じ。

 染左はまず NHK 連続テレビ小説『ちりとてちん』の裏話をいろいろ。師匠の林家染丸が落語監修をしているため、その手伝いでちょくちょく収録にも立ち会ってるそう。
 1 席目は「牛ほめ」。喜六(的男)と池田の旦那の対比が視覚に訴えるほど明瞭。クスグリのいちいちがわかりやすく、後半は池田の旦那がボケてみたりと笑いのかぶせ方も新鮮。最後は「屁除け魔除けになって、第一、牛穴が隠れます」と念入りに。

 ゲストの遊喬はマクラから独特の空気を振りまきつつ、恐い話から「胴切り」を。斬られた男の足を見台の上で指を使ってあらわしながら「ついてきてや~」がたのしい。胴からの伝言で足のところへ行くと、足が「あんまり女湯ばっかり見んように。フンドシが傷んでしょうがおまへん」。

 染左の 2 席目は、ちょっと遊喬にビビりつつ「始末の極意」をフル・ヴァージョンで。やはりここでも始末家のふたりの対比がお見事。

 中入りをはさんで染左の 3 席目は「小倉船」をたっぷり。荒唐無稽な展開とハメモノの賑やかさで SF 活劇風。芝居の所作もきっちりと違和感なく。堪能。


 染左さんの会は「真面目な勉強会」って印象です。きっちり稽古を積んだ噺を観てもらいます、って感じ。前売り予約 1,200 円ってことを考えると、えらいお得感があります。

 次回は 12 月 22 日(土)です。

林家染左展示室

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できちゃったらくご!

2007/10/25 @天満天神繁昌亭

  • 《オープニング》
  • 月亭遊方 「迷走配達人」
  • 笑福亭たま (そっくり?)
  • 旭堂南湖 (パンダ)
  • 姉様キングス 《音曲漫才》
  • 笑福亭福笑 「はははぁ家族」
  • 《エンディング》

※ 第 38 回
※ とくに記載のない場合は自作ネタ


 国立文楽劇場を飛び出したのが 21 時 10 分頃。疾風ダッシュ(のつもり)で地下鉄「日本橋」駅へたどり着くも、次の便まで待ち時間が 4 分。堺筋線を北上して「南森町」駅に到着し、こっからもダッシュ(のつもり)で繁昌亭へ。21 時半頃到着すると、ロビーで南湖さんがネタ繰りされてました。
 会場入りすると、遊方さんの高座の途中。この日はゲストで福笑さんがネタ下ろしされると云うこともあってか、1 階席がほぼ埋まり、2 階席にもお客さんが入ってました。レイトショーのマニアックな会でこんだけ入れば御の字でしょう。私は 1 階席後方の補助席スペースで。


 遊方は郵便配達員の噺。前回アナウンスしていたものが形になったよう。「どこまで行くねん!?!?」ってくらいの迷いっぷりがたのしい。最初から観たかった。

 たまは、そっくりだと紹介された男が自分とは似ても似つかないような気色悪い男だったって噺。気色悪い男で出オチの感あり。

 南湖は中国公演の話をマクラに、パンダのうんちく話。『日本書紀』をひもといての渡来物語にダジャレを盛り込み、さらにパンダの生態を解説。

 ここでサプライズ。あやめの出番が姉様キングスに! 数日後に控えたゲイ・イヴェント向けのネタを試運転。
 メニューは都々逸、ストトン節、阿呆陀羅経とベーシックな組み立てながら、レイトショーと云うことで B 面仕様。「せんせんづくし」の阿呆陀羅経がネタ下ろし。かなりキツめのシャレも。

 トリはゲストの福笑。不眠症の男と、スカタンを笑ってごまかす家族の噺。睡眠不足でイライラして喧嘩腰なのに、なぜか気晴らしに動物園へ。アイディアがまだ固まりきってないようで、福笑ならではの爆発力に欠ける。


 最後にできちゃったメンバー勢揃いで抽選会&エンディング。ちょうど 23 時頃に終了。遅れて行ったんで遊方さんの途中からになったのは残念でしたが、姉キンが観られてラッキーでした。
 福笑さんもたまさんも、これからアイディアを煮詰める段階に感じました。とくにたまさんは開演直前に書き上げたそうで、まだまだこれから足したり引いたりの余地ありと云う印象でした。新作ネタ下ろしの会ですから、『育っちゃった』に掛けられるように育つかがたのしみです。

 次回は 12 月 25 日(火)です。クリスマスと云うことで、ちょっとした企画があるかもしれませんよ。サンタさん(サンキンさん?)が登場するかも!?!?
 その前に、11 月 16 日(金)には『育っちゃったらくご!』もあります。

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桂吉朝三回忌追善落語会

2007/10/25 @天満天神繁昌亭

  • 吉朝一門 《口上》
  • 桂吉の丞 「軽業」
  • 桂千朝 「鴻池の犬」
  • 桂南光 「胴切り」
    ―― 中入り ――
  • 《偲い出トーク》
  • 桂吉朝 「くっしゃみ講釈」
  • 吉朝一門 《御挨拶》


 吉朝さんがあっちへ行ってもう 2 年になるんだなぁと、しみじみ。《偲ぶ》と云う言葉がまだピンとこないまま、あっと云う間でした。そう考えると、まだ受け入れられてないと云うか、受け入れたくないと云うか、信じ切れてないんだなぁと云う思いです。
 追善の会には吉朝ファンの面々が、遠方からも集結しました。直前でもチケットを買えたようで、入りが心配だったんですが、補助席も出る大入りに。


 まずは吉朝一門が勢揃いし、代表してあさ吉が口上。「こう云った口上の台詞は苦手なんですが、きょうはなるべく手短に、要点だけをかいつまんで」と、吉朝のよく使っていたギャグを。
 演者として、また客として、吉朝がよく国立文楽劇場へと足を運んでいたこと、師匠の米朝との二人会をとても喜んでいただろうこと、米朝のもとで内弟子生活をした吉朝一門にとって、『米朝・吉朝の会』はダブル師匠の会と云う感じで、喜びも 2 倍なら、楽屋へ戻ってからのダメ出しも 2 倍だったこと。
「トークのコーナーは豪華なメンバーで、おそらく延びるだろうと思います。あんまり延びた場合は、師匠のビデオが早送りになる場合もございます」
「師匠は舞台が大好きで、そしてお客さんのことが大好きでした」
 あさ吉らしいやわらかい語り口で、心にしみる口上。
 よね吉はいまにも泣き出しそうな表情。みなが国立文楽劇場での前座を経験しているなか、唯一未経験の吉の丞がこの日の前座を務めると名前が出たとき、吉の丞は涙をこらえるのに必死だった様子。

 落語の前座は吉の丞の「軽業」。もぎとりは一間の《大イタチ》と《取ったり見たり》でちょい短縮。軽妙な口跡が心地良く、見世物小屋の呼び込みの怪しい表情など、雰囲気作りが上手い。後半の軽業興行は綱渡りの所作にバランス感覚の良さを発揮。口上もきっちりと。

 千朝はペット・フードや盲導犬の話をマクラに「鴻池の犬」。前半は船場の大店の番頭と鴻池善右衛門の手代とのやり取りを丁寧に。後半はワンワン連合にホネ吸い遊びなど、独特の千朝ワールド全開。独特の口調で犬社会の描写に違和感なし。

 ざこばに替わって南光が中トリ。南光と吉朝は同じ高校の出身で、南光が 3 年先輩。噺家入門後も住まいが近所だったのでよくいっしょに飲みに行ったが、老け顔の吉朝がいつも先輩に見られてたそう。
 さらにマクラいろいろから「胴切り」へ。辻斬りにあった竹ののんびり具合がおもしろい。胴は風呂屋の番台として、足は麩を踏む職人として、それぞれ就職したところで「みなさん、付いてこられてますか?」。胴からの伝言で足のところへ行くと、足が「あんまり茶を飲まんように。おしっこが近ぅなります」。

 中入りをはさんで《偲い出トーク》は、下手側の床几に司会の三代澤康司アナウンサーとわかぎゑふ、中央の床几に桂米二、桂米朝、桂ざこば、上手側の床几に笑福亭鶴瓶、桂小枝。小枝は吉朝と同期だが、鶴瓶は以前に『ぴあ』で対談した程度。床几で別れてて離れてるのが不自然と、真ん中の床几に全員が寄り添って。
 口々に吉朝をクサしたり持ち上げたり。総論は「落語は上手いが、いたずらやシャレの度が過ぎる」。
 途中で南光や吉弥を呼び出してムリヤリしゃべらせたり。吉弥は、吉朝が失敗した話はないのか?と振られて、吉朝が江戸落語に挑戦すると云う趣向の会でダダスベリし、平謝りしてリクエストで追加の 1 席を演ったエピソードを披露するも、「失敗話ちゃうやん、美談やん!」とツッコまれる。
 ざこばと鶴瓶の脱線が多く、それはそれでおもしろかったが、もうちょっと米朝から話を引き出すようにしてもらいたかったかも。

 消灯した会場に出囃子の「外記猿」が流れる。スクリーンに高座が映し出されただけで拍手が起こり、吉朝が登場して再度拍手。着座したところで「グレート吉朝!」の大向う。
 落語のオチの分類から講談の話へとマクラをつないで「くっしゃみ講釈」へ。喜六(的男)と兄貴分の政とのやり取りがいきいき。のぞきからくりの「八百屋お七」や講釈の「難波戦記」も雰囲気たっぷり。うまおもろい高座を堪能。
 吉朝がそこにいた。

 最後に再度吉朝一門が揃って、代表のあさ吉がごあいさつ。
「もうなにもしゃべることはございません。我々弟子 7 人はもう、あとは芸の道を精進するだけでございます。これからも吉朝一門をどうぞよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました」


 大御所の集まった大会場での会で、出番が少なかったとは云え吉朝一門の 7 人はやや緊張気味だったかも。それでも《らしさ》で場をなごませたあさ吉さんの口上と最後の挨拶には心打たれました。
 目玉のトーク企画ですが、たしかに盛り上がったんですけど、もうちょっと吉朝さんのあれこれを聞きたかったと云うのが正直なところ。事前にいろいろ取材しておくとか、いっしょに会をしてた千朝さん、雀松さん、南左衛門さんあたりも入れるとか。落語を 1 席減らしてでもトークをもっと、と思いました。そんななか、同期の小枝さんの話は新味があっておもしろかったです。

 追善の余韻もそこそこに、繁昌亭へ猛ダッシュ。

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骨、寄せます! 桂歌之助独演会

2007/10/24 @天満天神繁昌亭

【歌之助が歌之助になる日】

  • 桂ちょうば 「始末の極意」
  • 桂歌之助 「野崎詣り」
  • 海老一鈴娘 《太神楽》
  • 桂歌之助 「ねずみ」
    ―― 中入り ――
  • 桂歌之助 「善光寺骨寄せ」


 とうとう歌之助さんが先代のお家芸《骨寄せ》を演られると云うことで、これはやっぱり観とかんと!と行って参りました。私自身は《骨寄せ》を観たことないんで、かなりたのしみに。立ち見も出る大入り満員で、やっぱりマニアな方々のお顔があちこちに。 


 開口一番のちょうばは「始末の極意」。以前に観たときと同様、本屋で読んだ節約術の本の話に「秘伝書」のネタを織り交ぜたマクラから本編へ。免許皆伝の始末家と始末家見習いとの対比クッキリ。短縮ヴァージョンながら、今回は無事に極意を伝授してもらう。

 歌之助の 1 席目は、今回のテーマ《骨寄せ》について軽く触れてから、亀田ファミリーの話題から自分自身を振り返ったり、マクラたっぷり。軽快で笑い多し。
 「野崎詣り」は喜六・清八のやり取りがオーヴァー・アクションでおもしろさ倍増。川辺を歩く人と喧嘩してる途中で稽古屋連中を乗せた屋形船が登場して華やかに。

 久しぶりの鈴娘の太神楽は、何度観てもやっぱり包丁皿回しがスゴい。

 歌之助の 2 席目は、旅館にまつわるごく軽いマクラからすぐさま「ねずみ」へ。元気な卯之吉の様子が、のちに聞かされる哀れな境遇がよりシリアスに。またそれがあったればこそ、左甚五郎が彫った動くねずみを見た百姓のやりとりが爆笑を誘う。正直者が報われる噺を心地良く。

 中入りをはさんで、いよいよ「善光寺骨寄せ」。客席の照明が少し落とされ、雰囲気もそれらしく。
 仏教の起こりから日本への伝来を経て、善光寺の由来から血脈けちみゃくの印が登場。この印を額にもらうと極楽往生できるため、地獄が困る。そこで閻魔大王が石川五右衛門を呼び出し、血脈の印を盗ませようと画策する。‥‥と、ここまでダジャレ・クスグリがてんこ盛り。
 賽の河原に散らばった五右衛門の骨が呼び寄せられる‥‥と、天井からしゃれこうべがストーンと。この頭だけ先代の作を借り、首から下は自作したそう。骨にまつわるあれこれをはさみ、会場の照明が完全に落とされると、地面に散らばった五右衛門の骨がふわふわと人の形に浮かび上がる。蓄光塗料が塗られた骸骨が暗闇にぼんやり光って妖しい。
 趣向が終われば骨はさっさと舞台袖へ引っ込めて、復活した五右衛門が見事に血脈の印を盗み出すラストまでをコミカルに。


 《骨寄せ》は初演と云うことでぎこちなさもありましたが、そこはしゃべりでしっかりフォロー。先代譲りの趣向をたのしませていただきました。独演会としての構成も良かったと思います。
 で、この「善光寺骨寄せ」、なんか知ってるなぁと思ったら、趣向なしで「お血脈」と云う演題で掛けられるんですね。誰かので観たか聴いた記憶があります。

桂歌之助ファンサイト/歌と舞のゆきち亭

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LOUD PARK 07 in Osaka

2007/10/23 @大阪城ホール


 今年も LOUD PARK 参戦です。なんと云ってもロニー・ジェイムス・ディオ在籍時の BLACK SABBATH が HEAVEN AND HELL として来日ですから、メタル・ファンとしては「これを観ずしてなにを観る!」ですわ!

 18 時過ぎに大阪城ホールに到着。グッズ売り場が意外に空いてて、狙ってた T シャツも無事確保。なんや拍子抜け。
 会場入りすると‥‥グッズ売り場が空いてるはずですわ。チケットが売れなかったらしく、縦方向で使用する予定だったのを横方向に変更。チケットを取ったのが遅かったんで、わざわざアリーナ中央付近の PA 横を取ったのに、振り替え座席は列こそ前ですがステージ上手端からまだ外側でした。がっかり。


松本和之

 チケットには 18 時半スタートと記載されてるんですが、それより前に前座が上がってました。こんなん知らんかった。彼は Janne Da Arc のメンバーだそうです。1 曲しか聴けず、しかも音が割れまくりで、音楽的な善し悪しもわかりませんでした。


NILE

 定刻でスタート。エスニックな SE が流れてきてちょっと期待したんですが‥‥デス・メタルでした。あきまへん。拷問の 30 分。
 曲間にちょこちょこ MC 入るんですが、しゃべりはまともな声なのに、曲紹介になると「This is called... VOOOOUUURRRRR!!!」って感じで、肝心の曲名がまったくわかりません。


MARILYN MANSON

 約 25 分のセット・チェンジをはさんで、怖い物見たさの MARILYN MANSON がスタート。マリリン・マンソン〈Vo〉は白塗りに目の部分だけ赤い横線が入ったいつものメイクに、黒のタイトな衣装。包丁付きマイクを持って登場。若い女の子はほとんどマンソン・ファンだったよう。黄色い声が飛び交いまくり。ちなみに、マンソン・ファンはたいがいゴシック風の衣装で、すぐにわかります。
 初期のアルバム 1 枚しか聴いたことないんで、知らない曲がほとんど。知ってたのは映画『マトリックス』(か『マトリックス リローデッド』)に使われてた曲くらい。ヘヴィななかにポップさが見え隠れした感じ。
 大掛かりなセットを使ったりもするそうなんですが、さすがに単独公演でないとそれは無理なようで、やや地味な印象。マンソンのパフォーマンスは《無軌道》としか形容できない。ほとんど MC もなく、うろうろしたり、マイク・スタンド投げたり、床に寝そべったり。なにか気にくわなかったことがあったのか、終盤は観客に背を向けて歌い続けてました。最後の方で出てきた演説台でのパフォーマンスはなかなかで、観客をアジッてるかのよう。
 ちょっと期待してただけに、やや肩すかし。ちょうど 1 時間くらいでした。


HEAVEN AND HELL

 約 25 分のセット・チェンジ。アルバム『MOB RULES』の廃墟をイメージしたセットの後方に、アルバム『HEAVEN AND HELL』の喫煙天使。なかなかええ感じです。
 スタートからロニー・ジェイムス・ディオ〈Vo〉は“Mob Rules”で怪気炎。上手側にトニー・アイオミ〈G〉、下手側にギーザー・バトラー〈B〉、後方にヴィニー・アピス〈Ds〉の布陣。とくに左右のふたりの存在感がスゴい。もちろんロニーは軽快なステップで歌いまくり。
 いつの間にやらステージ後方が壁になって、全体が廃墟に。
 やっぱり良かったのが『HEAVEN AND HELL』からの曲で、とくに“Die Young”を聴けたのが感動。(ただ、“Neon Knights”がなかったのが残念)
 最後の“Heaven And Hell”は、ここでも長尺アレンジは健在だったが、ギター・ソロがやや冗長にも。これは昨年の DIO での演奏が良かったように思うが、それでもやっぱり観客の大合唱が圧巻。ロニーの煽り方も上手い。
 で、腹 6 分目くらいの 1 時間で終了。


 いやぁ、「終わり良ければすべて良し」です。HEAVEN AND HELL はやっぱり良かった。とくにロニー、まだまだ、最低でもあと 5 年はがんばれそうです。
 ただ、フェスティバル形式と云うことで短縮セットだったのがやっぱり残念。まぁこれは DVD 観て我慢することにします。

LOUD PARK 07

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出没!ラクゴリラ

2007/10/22 @ワッハ上方レッスンルーム

  • 《記念口上》
  • 林家花丸 「阿弥陀池」
  • 桂こごろう 「貧乏神」 (作:小佐田定雄)
    ―― 中入り ――
  • 笑福亭生喬 「喧嘩長屋」
  • 桂つく枝 「莨の火」
  • 《わいわい抽選会》

※ 第 70 回


 前回は行けなかったんで、ひさびさ感のあるラクゴリラ。なんとなく期待感の高そうな観客が 97 人の大入り。と云うのも、今回は 70 回記念と云うことで、観客投票によるリクエスト落語会。以下の組み合わせからのチョイスでした。

  1. つ「宿替え」/花「幇間腹」/こ「書割盗人」/生「蔵丁稚」
  2. 花「阿弥陀池」/こ「貧乏神」/生「喧嘩長屋」/つ「莨の火」
  3. こ「向う付け」/生「胴斬り」/つ「池田の猪買い」/花「厩火事」
  4. 生「つる」/つ「悋気の独楽」/花「あくびの稽古」/こ「愛宕山」

 口上の間に集計されたようで、結果はダントツで 2 番に。


 まずは 4 人揃って記念口上。下手側より生喬、こごろう、つく枝、花丸と座り、生喬から順にラクゴリラへの思いを。

 落語の部は花丸から。リクエスト投票の結果を発表し、最近のニュースの話題から「阿弥陀池」へ。以前に観たときよりもクスグリが増量し、クドいところは適度にカット。全体もしっかり固まった感じで、見事に花丸らしく笑い多し。とくに登場人物のキャラクターをきっちり設定することで、やり取りのおもしろさに新味が。

 つづくこごろうは花丸のあとで演りにくそうに「私のところは普通の落語です」。神社や神様の話をマクラに「貧乏神」を。仕事嫌いで女房に逃げられた男と、その男に取り憑いた貧乏神との友情物語。仕事嫌いの男をかいがいしく世話するも、最後には裏切られてしまう貧乏神の心情描写を丁寧に。もの悲しさのなかに脳天気な男の滑稽さも。

 中入りをはさんで、三重出身の生喬は赤福騒動に関するいろいろをたっぷり。夫婦の話へ転じて「喧嘩長屋」へ。夫婦喧嘩が間に入った者を巻き込んで騒動になる噺だが、とにかく喧嘩の迫力がスゴい。ここらは生喬の真骨頂。こごろうの「貧乏神」を引用したクスグリをサラッと入れる余裕も。

 トリのつく枝は乗り物の話題を軽く振って、めずらしい「莨の火」を。上品でどことなく謎めいた老人が駕籠屋の案内で御茶屋へ。これが豪快な散財ぶりで、御茶屋の男衆も大興奮。老人の引いた雰囲気と、だんだん賑やかになる御茶屋の座敷、テンションの上がる男衆、この対比がお見事。老人は最後までミステリアスに。

 最後の抽選会はラクゴリラの 4 人がそれぞれプレゼントを持ち寄って。なんじゃかんじゃとワチャワチャしながら賑やかに。4 分の 1 を超える確率ながら、かすりもせず残念。


 抽選会は残念でしたが、落語は充実。4 席ともそれぞれの持ち味が発揮されて、大満足の会になりました。
 実は私は違う組み合わせに投票したんですが、「莨の火」「喧嘩長屋」「貧乏神」「阿弥陀池」でうまく《喜怒哀楽》が揃った感じになって、番組構成としても記念の会にふさわしい最良のチョイスだったと思います。

 次回は 12 月 10 日(月)です。

出没!ラクゴリラ

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きふね寄席

2007/10/13 @貴布禰神社

  • 笑福亭三喬 「鳥屋坊主」
  • 笑福亭福笑 「釣道入門」 (作:笑福亭福笑)
  • 桂ざこば 「遊山船」
    ―― 中入り ――
  • 江田政亮(貴布禰神社宮司) 《ごあいさつ》
  • ざこば・福笑・三喬 《座談:文紅を語る》

※ 第 30 回


 前回も大入り満員だったんでちょっと早めに行ったつもりだったんですが、開演 45 分前くらいに到着するもすでに 100 人以上来られてました。開演前に膝送りもあり、最終的な公式発表は 229 人。えらい人出です。
 入場時にパンフレットともに『きふね寄席』の瓦煎餅と千社札をいただきました。こうしたちょっとしたお土産も嬉しいもんですね。


 トップが三喬とは贅沢な会。独演会の宣伝をきっちりしてから、文紅に付けてもらったと云う「鳥屋坊主」を。
 鳥屋の奉公人だった喜六・清八が店を追い出され、流れ着いたのがとある山寺。そこで坊主の六法・八法として勤めることに。住職の留守にトリスキで一杯引っかけ大騒ぎ。そこへ葬式の依頼が‥‥。
 いつもよりちょっと悪めの設定の喜六と清八を、独特の三喬節で好演。終盤のお経の文句がムチャクチャで、それでいてそれっぽいのがまたおかしい。

 福笑は世間にいろいろ物申してから「釣道入門」へ。釣りの名人がビギナーを連れて渓流釣りに出かける噺。名人の「ここは魚影が濃い」にビギナーが「ギョエッ!?!?」。そして名人がまったく釣れずにビギナーは「おっとっとっと、また釣れた」。この繰り返しにクスグリをサンドイッチ。
 名人のキレッぷりが福笑の真骨頂。途中、高座から膝隠しを落としてしまうハプニングもあり、それほどの熱演。いっぱいの客席からうねりのような笑い声。会場に一体感が生まれ、途中から「ギョエッ!」も客席から洩れ出す。わかりやすいサゲも客席から。

 ざこばは文紅、枝雀、吉朝と亡くなった者を思い出す。枝雀の思い出話をマクラに、季節外れを詫びつつ「遊山船」を。これが最初っからえらい勢い。福笑に負けじとの意地がありありと見て取れる。
 川辺へ夕涼みに来た喜六と清八のやり取りもテンション高い。とくに喜六が川に浮かぶ屋形船相手になんじゃかんじゃといっちょかむ様子が、なかばけんか腰。喜六・清八と云うよりも、ざこば・清八。入り込み具合が尋常でなく、おもしろさ倍増。
 喜六が自宅へ帰ってからの女房との船遊びごっこの段取りもけんか腰。おかげでサゲのすっきり感との対比が心地良い。

 中入りをはさんで、江田宮司の挨拶のあと、文紅を語る座談会。三喬の司会で、私服に着替えたざこばと福笑が用意されたビールとおつまみを前に、観客からのアンケートに答える形式で。
 淡々とした芸風が、晩年は飄々とした芸風になっていったそう。大喜利が得意で、「青井竿竹」のペンネームで台本を書いたりもされ、ざこばも福笑もテレビの大喜利番組で世話になったそう。
 ざこばは文紅にかわいがられたそうで、ふたりで《紅丸プロダクション》と称して会社ごっこをして遊んだそう。その名残で、ざこばはその後も「文紅社長」と呼んでたそう。
 もともと《文光》だったのを、自分で《文紅》に変えたそう。「なぜ文紅は文團治を継がなかったのか?」との話題から、ざこばと福笑それぞれの名前に対する考え方の違いが興味深かった。ざこばは「大阪の名前はぜひ誰かが襲名して大阪に残すべき」と考えるが、福笑は「名前は芸によって大きくするもの」とこだわりなし。
 文紅はまったくの下戸で、ある時、イライラした文紅がざこばにバナナを買いに行かせ、暴れ食いをした結果、腸捻転になったそう。


 狭い会場にギッシリの観客で、とにかく爆発的な笑いのエネルギーがスゴい会でした。それを引き出す演者の落語もさすがで、最後にざこばさんが云ってた「ここ(福笑)と落語会やるとな、格闘技みたいになるねん」ってのが云い得て妙。
 私自身は文紅さんの高座を観てませんが、今回の対談でなんとなくその人となりが伝わってきたような気がします。

 終演後にプレゼント抽選があったんですが、なんと 1,000 円分のスルッと関西カードをゲット! 会費が 1,500 円でしたから、実質 500 円となりました。ラッキー!

きふね寄席

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ループ落語会 中野光江プロデュース

2007/10/12 @天満天神繁昌亭

  • 林家染二 「手水廻し」
  • 林家小染 「親子酒」
  • 笑福亭福笑 「きょうの料理」 (作:笑福亭福笑)
  • 笑福亭松之助 「後家殺し」
    ―― 中入り ――
  • 姉様キングス 《音曲漫才》
  • 林家染丸 「三十石」


 長く落語会のお世話をされていたと云う中野光江(ループ代表)さんが今年 3 月に亡くなられ、今回はその追善興行とのこと。私自身は中野さんのことを存じませんが、番組が良いんで参加いたしました。
 補助席も出る大入り。業界関係者とおぼしきスーツの一団も。


 トップから染二と、いきなり濃い。方言のいろいろをマクラに、手水の解説を入れてから「手水廻し」へ。田舎旅館の面々の田舎弁が抜群で、寺の和尚は強烈なケイレン系。ここらは染二らしさ満点。

 つづいて小染が得意の酒の噺で「親子酒」。とにかく酔態がお見事。陽気に酔っ払う息子に対し、うどん屋のツッコミはややキツめ。最後の父親と息子の対峙もスゴい。

 福笑はマクラを振らずに「きょうの料理」を。ルー・チョンキ先生による中華料理教室の噺。大胆かつ豪快な調理。次々と調味料をぶち込むところで次の句がすぐ出ず「ヒサシブリノねたアルヨ」。アシスタントにツッコまれたルー先生は「中華料理アマリ細カイコト考エナイ」でかわす。
 《料理》と云うテーマで考え得る笑いのパターンをすべて詰め込んだような、笑いのてんこ盛り。料理ネタに幾何学やトポロジーなんて言葉が出てきて、しかもそれが笑いにつながるのも福笑ならでは。

 中トリは繁昌亭初登場の松之助。「間違ってもしょうがない」「気に入らなんだら聴きにこんでええ」などと、いまの噺家としての心境なんかを語ってから「後家殺し」へ。
 亡くなった旦那の一周忌法要のあとに、生前好きだった浄瑠璃の会を開く。そこで見かけた後家と‥‥ってな、ちょっと艶っぽい噺。浄瑠璃を語る場面でもなかなかそれっぽく、たっぷりと。
 後の染丸によると、松之助はこのネタを最近ネタ下ろしし、この日が 3 回目の高座だったそう。今年 82 歳でもまだまだ壮健。

 中入りをはさんで《究極の色物》姉様キングス。この日は初姉キンの観客が多い。メニューは都々逸、ストトン節、阿呆陀羅経を A 面ネタで。阿呆陀羅経には中野ループ代表のことも盛り込んで。

 トリの染丸はいろいろしゃべりつつ逡巡して「三十石」を。さすがに手慣れたもので、安定感抜群。安心して賑やかな船旅に身をゆだねる。
 終盤の船頭の舟唄では林家花丸が舞台袖からええ声を聞かせる。


 期待を裏切らない、満足度の高い会になりました。中野さんへの良い供養になったんではないかと思います。
 松之助さんはまだまだお元気ですね。昼席への登場も期待したいです。

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らくご道 笑福亭生喬と桂こごろうの落語会

2007/10/11 @上方亭 (ワッハ上方 小演芸場)

  • 笑福亭生寿 「つる」
  • 笑福亭生喬 「殿集め」
  • 桂こごろう 「子は鎹」
    ―― 中入り ――
  • 生喬・こごろう 《対談:夕焼け日記》


 生喬さんとこごろうさんの定例会へ。ちょっとで遅れたんですが、なんとか開演には間に合いました。
 入りは実測で 29 人。床几がほどよく埋まった感じです。


 開口一番は生寿の「つる」。散髪屋で聞いてきた甚兵衛の噂話が凄まじく口汚い。罵り言葉のなかには「ハゲちゃん」とも。
 序盤はいつも以上に声は出てたが早口で、後半は適度なスピードに落ち着くも少し声を飛ばした感じに。ここらは実践で徐々に鍛えられるのだろう。

 生喬はやたら大きい羽織の紐を付けて登場。紐が重すぎて羽織のが破れると云うことで、すぐに羽織を脱ぐ。『糞尿特選落語会』『丑三つ亭』『大・上方落語展 in 渋谷』の裏話なんかをたっぷり。噺家の婚期が後退してるって話から「殿集め」へ。侍の威張り具合が生喬にぴったり。

 こごろうは生喬の言い間違いに軽く触れて、すぐさま「子は鎹」に。
 飲んだくれの亭主に愛想を尽かした女房が、息子の寅も置いてひとり家を出た‥‥と云う設定。亭主の近所に引っ越してきた姉貴分と女房が町でバッタリ出会い、姉貴分の家で茶飲み話に花を咲かせる。ここで姉貴分の茶を煎れる所作が実にこまかい。
 駄賃にしては高額な金を手にしていた寅への説教、あるいは鰻屋で姉貴分をはさんでの女房への言い訳、ここらの亭主の心持ちの掘り下げが秀逸。こごろうらしいあったかさがたっぷりと。

 中入りをはさんでの対談では、すぐに身につくネタとそうでないネタがある、ってな話題から。生喬はノロケる場面が苦手だそう。
 柳家小三治のインタビューに「笑わせるのが恥ずかしい」旨の発言があったことを受けて、こごろうが「くっしゃみ講釈」で笑わせすぎて覗きからくりを仕込み忘れ、そのことで新演出と云える効果となったことを紹介。「災い転じて福となす」の好例。


 この日はこごろうさんの「子は鎹」が秀逸でした。テクニック的なこともさることながら、亭主の心情が丁寧に描かれていて良かったです。
 いつもながら対談も興味深く、おふたりにはまだまだ笑わせてほしいと思いました。

 次回は 11 月 16 日(金)です。

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売名高座 遊方・花丸・かい枝のチャレンジ落語会

2007/10/10 @道頓堀極楽商店街 ゑびす座

【今回は 3 席とも古典の改作「私古典しこてん」の発表だ!!】

  • 笑福亭呂竹 「犬の目」
  • 桂かい枝 「ちりとてちん」
  • 林家花丸 「無いもん買い」
  • 月亭遊方 「稲荷俥」

※ 第 5 回


 会場を変えたりコンセプトが迷走したりといろいろ紆余曲折しつつ、3 人がチャレンジする会と云うことで固まったようです。今回は「私古典しこてん」と称して古典の改作にチャレンジ。
 今回からパンフレット代わりのコピー本を配布することになったそう。今回の内容は 3 人へのアンケートなどで、表紙には中西らつ子さんのイラスト入り。懐かしい雰囲気でなかなかたのしく仕上がってます。
 入りはかい枝さんからの公式発表で 44 人。過去最高だそうです。


 開口一番の呂竹は「犬の目」をきっちり丁寧に。おもしろい空気感が出てるんで、クスグリで言葉を少し足したり引いたりすれば笑いがもっと増えそう。好印象。

 かい枝は海外公演の話をマクラに「ちりとてちん」を。基本は南光の型のように思えたが、旦那の家を最初に訪れる物喜びする男がジョンで、半英語落語的展開に。ところがすぐに流暢な大阪弁を話すようになり、名前も喜ぃさんに。なんか中途半端。

 花丸はマクラに今回のコピー本作成の裏話。アンケートを書くために遊方が花丸宅を訪れ、2 時間ほどしゃべってた間に書いたのが「入浴剤」のひと言だけだったそう。
 「無いもん買い」は、ビリーとヒロシが天神橋筋商店街を 6 丁目から 1 丁目方面へ流してくる花丸版。さすがに初演時のインパクトは超えられず。寿司屋や銃砲店など、固めるところはきっちり固めた方が、しっかりクスグリが効きそう。

 トリの遊方はいろいろとマクラを振ってから、米朝が復活させた「稲荷俥」を(おそらく)ネタ下ろし。
 狐を怖がったり思わぬ大金に喜んだりと感情の起伏が激しい俥屋のキャラが遊方にぴったりで、ネタのチョイスはグッド。導入部は仕方ないとしても、途中にナレーションが入らないよう構成すれば遊方色がアップしそう。
 終盤、金を置き忘れたことに気付いた客が俥屋の自宅を訪れるも、入るきっかけがつかめなくて玄関先で様子をうかがってると、近所の店から次々と酒や料理が運ばれてくる‥‥って場面を追加。玄関先でヤキモキする客の様子がおかしい。


 全体としては 2 時間弱とコンパクトにまとまりましたが、トリの遊方さんの「稲荷俥」がたっぷりで、これがなかなかの好感触。遊方さんの古典は独特の味があるんで、臆せずどんどんチャレンジしてもらいたいです。
 せっかく 3 人の会なんですから、中入りをはさんでそれぞれのネタについて 3 人でトークするとか、そんなんがあればなぁと思います。

 次回は来年の 1 月 21 日(月)です。

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繁昌亭夜席 福団治・福若 親子会

2007/10/8 @天満天神繁昌亭

  • 福楽・福車 《対談》
  • 桂福若 「睨み返し」
  • 桂福團治 「南京屋政談(前編)」
  • 桂福若 「南京屋政談(後編)」
    ―― 中入り ――
  • 桂福車 《小咄》
  • 桂福楽 《落語教室》
  • 桂福團治 「鼻の狂歌」


 桂吉朝さんが最後に口演した「弱法師」はもう誰も演られないと思ってたんですが、繁昌亭の公演予定に「菜刀息子」(「弱法師」の別称)とあってビックリ。演者は福團治さんで、なるほど人情噺を得意とする福團治さんならあり得るやん!と合点しました。もちろんそれを期待して前売り券を早々に購入。
 当日、会場に行くと、入口前が大混雑。聞くところによると、前売りがあまり出なかったので某新聞社経由で優待券をばらまいたところ、想像以上のお客さんが来られて即座に札止めになったそうで、支配人自ら応対されてました。立ち見も出る大入り満員になったとは云え、普通に前売り券を買った身としては複雑な心境です。


 まずは福楽と福車による対談。親子の師弟を語ると云う趣向だったんだろうが、福楽は多くを語らず、福車は奥歯に物がはさまったような物云い。福車が福若に関する某巨大掲示板への書き込みのコピーを取り出したところでは、当の福若が乱入。歯がゆいまま終了。

 福若は龍虎の派手な柄の着物で登場。よく見ると福團治そっくりの顔。袂から大量の扇子、懐から大量の手拭いを取り出すも、狙いがわからず。父・福團治や母・翠みち代のことなども交えて、マクラをたっぷり。
 借金の話から「睨み返し」へ。借金の追い返し屋が主役の噺だが、こわもての福若にぴったり。ややクサめながら、ド迫力でなかなかの雰囲気。ところが、途中で舞台袖から手を打つ音が。どうも福團治が巻きを入れたようで、これにキレた福若が舞台袖へ怒鳴り込み、扇子を投げつける。「シャレですわ」とフォローするも、観客は退きまくり。

 福團治は開口一番「お疲れになりましたやろ」。それ以外はとくに福若のことには触れず、いつもの調子で扇子に身体をあずけて自虐的なマクラから、いつの間にやら「南京屋政談」へ。勘当された若旦那の心持ちをじっくり丁寧に。叔父に助けられた若旦那がカボチャを売りに出かけ、売り声を上げたところで福若と交代。
 福若は、新町を思い出しながらカボチャを売り歩く若旦那を軽妙に。ややクサいながらも、貧しい母子に若旦那がカボチャの売り上げを施してやる後半もたっぷりと。

 中入りをはさんで、予定になかった福車が軽く小咄。さらに福楽がうどんを食べたり焼き芋を食べたりの落語教室。落語会らしい雰囲気に。

 トリの福團治は、マクラいろいろから、「菜刀息子」ではなく「鼻の狂歌」! めずらしい噺ではあるし、おもしろかったけど‥‥。


 プログラムに「南京屋政談」以外の演題が入ってなかったんで嫌な予感がしてたんですが、見事に的中してしまいました。好意的に考えれば、「菜刀息子」は「南京屋政談」とネタが付くので変更したとも取れますが、ネタ出ししてる会でそれはないんちゃうん?と云う思いです。
 これは私の想像ですが、なんやかんや云うても最後には息子のことを許してやる父親を描いた「菜刀息子」を演る気分ではない、ってことでネタを変えたんでは?
 いろんな意味でめずらしい会に遭遇したとは思いますが、どうも釈然としません。モヤモヤしたままの帰宅となりました。

 帰ってから繁昌亭のホームページを見てみると、福團治さんのネタは「お楽しみ」となっていました。そこだけ変えときゃええんかいな。事前告知もなかったですし、払い戻し理由に値する変更では?と思いました。

天満天神繁昌亭

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文太の会 in 高津の富亭

2007/10/7 @高津宮・高津の富亭

【文太の「贋作あれこれ」】

  • 桂文太 《開口 0 番》
  • 桂文太 「崇徳院」
  • 桂文太 「足上がり」
  • 桂あさ吉 「抜け雀」
  • 桂文太 「すっぽん三次」


 先日の 『たまのフレンドリー寄席β』 で文太さんの良さを再確認。やっぱり文太さんはええなぁ、もっと観とかんといかんなぁ、とさっそく。
 ザッと 50 人くらいでしょうか。男性客がほとんどです。


 まずはいつもの文太の開口 0 番。話題は、中元や歳暮で酒に困らない、高岡美樹への出演依頼、パソコン教室への妄想と現実、等々。

 文太の 1 席目は「崇徳院」。登場人物がみなやわらかい、あったかい雰囲気。丁寧でありながらトントントンと心地良いテンポ。散髪屋の鏡が割れて‥‥のサゲ。

 2 席目は、ゲストのあさ吉が「鳴り物の名手」(文太・評)だと云うことで「足上がり」を、大向うの話で存分に遊んでから。丁稚の定吉が旦那に 2 円で買収されてあっさり口を割るくだりが、なんともおかしい。バレてるとも知らずに番頭は軽いノリで、その後の芝居の真似事は雰囲気たっぷり。

 ゲストのあさ吉は、マクラで海外公演にまつわる話いろいろから、美術館の話につないで落語本編へ入ろうとするも、「ここにございました‥‥これは旅ネタに入るときですね」と、いきなり間違える。
 あさ吉の「抜け雀」は何度か観てるが、のんびりした宿屋の主人があさ吉のニンに合った感じ。この日は時間を気にしてか、後半がやや走り気味で荒い印象に。

 文太の 3 席目は、マクラでいろんな職業の大事なこと。落語の場合は、しゃべり、仕草、サゲ。講談の場合はサゲがなく切れ場で終わる。ひとしきり講談をクサしてから「すっぽん三次」へ。
 船場の大店のひとり娘のお花と手代の藤七が深い仲になる。出入りの男が事情を聞き出し、藤七を説得してふたりを別れさせる。藤七を追いかけるお花。これに目を付けたのがすっぽん三次。悪辣なすっぽん三次がどうなるか‥‥と云うところでお時間。マクラの振りが効果的。


 いやはや、贋作の「すっぽん三次」には参りました。元ネタがなんなのかも気になるところです。マクラの流れからすると講談からかな?
 文太さんのたっぷり 3 席でほっこりした満足感です。

 次回は 11 月 4 日(月)、ゲストは林家卯三郎さんです。

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二代快楽亭ブラック襲名十五周年記念毒演会

2007/10/6 @TORII HALL

【第一部】

  • 快楽亭ブラック 「転失気」
  • 快楽亭ブラック 「目黒のさんま」
  • 快楽亭ブラック 「カラオケ寄席」 (作:快楽亭ブラック)
    ―― 中入り ――
  • 快楽亭ブラック 「人性劇場」 (作:快楽亭ブラック)
  • 快楽亭ブラック 「道具屋・松竹篇」 (作:快楽亭ブラック)

【第二部】

  • 快楽亭ブラック 「押しくら」
  • 快楽亭ブラック 「権助魚」
  • 快楽亭ブラック 「文七ぶっとい」 (作:快楽亭ブラック)
    ―― 中入り ――
  • 快楽亭ブラック 「朝鮮人の恩返し」 (作:快楽亭ブラック)
  • 快楽亭ブラック 「イメクラ五人廻し」 (作:快楽亭ブラック)

【第三部】

  • 快楽亭ブラック 「近日息子」
  • 快楽亭ブラック 「聖水番屋」 (作:快楽亭ブラック)
  • 快楽亭ブラック 「英国密航」 (作:快楽亭ブラック)
    ―― 中入り ――
  • 快楽亭ブラック 「蛙茶番」
  • 快楽亭ブラック 「一発のオマンコ」 (作:快楽亭ブラック)


 ブラックさんが襲名 15 周年に引っかけての一挙 15 席口演、しかもそれが 3,000 円で観られるってんですから、これは行くでしょう。朝から晩までブラック漬けです。
 5 席ずつの 3 部構成で、第一部のスタートは 11 時から。集客はどんなもんかと思いきや、ザッと 40 人くらいの入り。まずまずじゃないでしょうか。落語会でよくお見かけする顔はごくわずかです。


 まずはマクラに長時間の会についてあれこれ。
 桂文福が若い頃にやった 24 時間河内音頭に対抗して、6 年ほど前に 24 時間落語会をやったときの話。ギネスブックの規定によると 2 時間に 10 分は休憩して良いそうで、それを拡大解釈して 3 時間に 15 分休憩で挑んだそう。ところが栄養ドリンクを飲み過ぎて、休憩中に飲食もままならない状態になったとか。
 その後、2 年半前には《ブラック十八番》と称して 1 日に 18 席演ると云う会を。その年の大晦日には再度、24 時間落語会を予定するも、病に倒れてお流れに。
 今回の 1 日 15 席は、近い将来の 24 時間落語会へ向けてのリハビリだそう。やる気満々!

 古典の「転失気」「目黒のさんま」は邦画マニアの面目躍如。とくに「転失気」の住職や「目黒のさんま」の武士など、しゃっちょこ張った人物に雰囲気あり。下ネタも付け合わせ程度で、初心者も安心!?!?

 「カラオケ寄席」は、客が演者や演題をリクエストし、ついでにカラオケを歌えると云う寄席ができた‥‥と云う噺。リクエストされるのが東京の噺家で馴染みがなく、わかりにくいところがあったかも。

 「人性劇場」は映画「人生劇場」のパロディか。刑期を終えた飛車角が、組長のはからいでイメクラへ行く噺。事あるごとに「任侠に生きる、男、飛車角!」と力む様子がたのしい。

 「道具屋・松竹篇」は、活キチ(映画狂い)の古道具屋の店先に松竹映画のキャラクターが次々に訪れると云う趣向。最後は実際に懐から赤いロープを取り出し、サゲにつなげるわかりやすさ。


 マクラを端折って 2 時間くらいでまとめるのかと思いきや、たっぷり 2 時間半。最初っからサービス満点です。
 インデアンカレー で腹ごなしして、14 時半から第二部。入りは少し増えて 50 人くらい。女性は片手で足るくらい。


 青春 18 きっぷでの旅のエピソードをマクラに「押しくら」、つづけて「権助魚」と、古典 2 席は満腹で睡魔が‥‥。

 予定していた「オマン公社」は第一部の「道具屋・松竹篇」と似たところがあると云うことで、変更されたのが「文七ぶっとい」。
 古典の「文七元結」をベースに後半はムリヤリな下ネタも入るが、左官屋の長兵衛をはじめとして登場人物をいきいきと。文七が入水自殺しようする文七を長兵衛が止める場面、工面したはずの金を持たずに帰ってきた長兵衛とその妻が喧嘩する場面など、元来の人情味はそのままに、感情の起伏をたっぷりと。

 「朝鮮人の恩返し」は「狸の賽」の子狸を朝鮮人の子どもに置き換えたバカバカしいパロディ。下ネタや宗教ネタも入って危険度高し。

 イメクラを訪れる変な客をつづった「イメクラ五人廻し」は、風俗レポーターとしての経験が存分に活かされ、変態客の人物像が妙にリアル。


 第二部は約 3 時間の熱演。とくに「文七ぶっとい」がたっぷり聴き応えありました。
 間が 30 分ほどになったんで外に出るわけにもいかず、会場内で休憩。観客は若干入れ替わったようですが、トータルは 50 人くらいと変わらず。第三部は 18 時から。


 マクラに自身の DVD の情報で、タイトルは『非国民』に『不敬罪』。以降、いろんな3 文字熟語がつづくそう。

 江戸の「近日息子」は初めてかも。息子が与太郎のバカさ加減が半端でなく、なんであんなに機転が利くのか不思議。そこから笑いにつながるんだろうが、上方的に考えるとちょっと不自然。が、これもまた様式美。

 「聖水番屋」は「禁酒番屋」(上方の「禁酒関所」)のパロディ。江戸の町に大流行した SM が禁止され‥‥ってな噺に。ところがこのストーリー・ラインにさほど無理がなく、上手く構成されている。(そう感じてしまうところがすでにおかしい?)

 そしてお待ちかねの「英国密航」。舞台は開国直前の日本。君主の命で井上聞多、山尾庸三、野村弥吉、遠藤謹助らが、足軽の伊藤俊輔の機転でイギリスへ密航する噺。歌舞伎の「白波五人男」をモチーフにしてるそう。
 資金繰りから船の手配まで、紆余曲折しつつもなんとか調達。なんとか到着したイギリスでスコットランド・ヤードに取り囲まれ、警官が叫ぶ「ふりーず!」「ふーあーゆー!」「ふぁっちゅあねーむ!」と、それに答える 5 人の名乗りがまさに歌舞伎調。
 歴史に沿った擬古典は映画的。長講をたっぷりと。

 一方、素人芝居を題材にした古典の「蛙茶番」は軽妙に。
 舞台番を任された男が調子にのって着物の裾を端折ると、褌を締め忘れてて‥‥って場面。ここで実際に立ち上がり、着物の裾を端折ると真っ赤なゾウさんパンツが!

 大トリに「一発のオマンコ」と云うのもブラックらしい。すすきののトルコ風呂を訪れた親子 3 人連れが「3 人で 1 発のオマンコを‥‥」と掛け合うと云う、「一杯のかけそば」のパロディ。バカバカしくも涙ぐましい噺。


 終演は 21 時前。休憩もはさんでますが通しで約 10 時間になり、ブラックさんは 8 時間近くしゃべられたことになります。観てる方は途中でウトウトしたりもできますが、しゃべりつづけたブラックさんの気力・体力には敬服します。
 長いだけかと思いきやなかなか充実の会で、とくに期待していた「英国密航」は秀逸でした。以前に観てますし、CD で何度も聴いてましたが、ブラックさんの上手さが光る噺だと思います。これはぜひ一度、機会があれば聴いていただきたいネタです。

快楽亭ブラックの出直しブログ

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糞尿特選落語会

2007/10/5 @天満天神繁昌亭

  • 笑福亭たま 「ぶりぶり」 (作:笑福亭たま)
  • 笑福亭福笑 「矢橋船」
  • 笑福亭三喬 「勘定板」
    ―― 中入り ――
  • 笑福亭生喬 「ちしゃ医者」
  • 笑福亭福笑 「絶体絶命」 (作:笑福亭福笑)


 これほどチケットを買うのがはずかしかった会もありません。『元祖大阪名物 あほの会』以上のはずかしさです。店員さんに「変わった名前の会ですね」と云われてしまいました。確かに。せめて繁昌亭のチケット売り場で買うべきでした。
 それはさておき、福笑さんプロデュースのシシババ特集と云うことで、覚悟の参戦。大入り満員です。もちろん福笑ファンも多数詰め掛けたとは思いますが、みなさん好事家ですねぇ。


 トップのたまは、ショート落語をマクラ代わりに、師匠の福笑の指示でこの会用に作った「ぶりぶり」。太ってるために病院で妊婦と間違われた挙げ句に侮辱された男が復讐する噺。ニンニクやニラを食べまくってクサいババを病院でぶちまけようと云う、なんとも無茶な復讐で、最後はもうえらい惨状に。ところがこれがあまりに酷すぎて漫画的になり、スラップスティック・コメディの様相。

 つづいてプロデューサーの福笑。たまの新作について「スカトロだけやない、SM まで入れてけつかる。おもろかったけども」と講評。
 シシババが続くことに断りを入れつつも「そちら(客)も承知でお越しになってる」と開き直り。まずは軽めの「矢橋船」から。前半の色問答はわちゃわちゃしつつもまことに風流。後半、酒を燗した尿瓶と本物のシシが入った尿瓶とを間違えて「ションベンやションベンやションベンや!」の連呼が凄まじい。

 中トリの三喬は、震災のときにトイレで不自由した話をマクラに、便所を閑所と呼ぶ地域があることと閑所板の解説をはさんで「勘定板」へ。やわらかい語り口に登場人物の田舎弁も相まって、ほんわかした雰囲気。しかし、算盤の上に盛られたババが妙にリアルに目の前に浮かぶ。ここらが三喬の腕か。

 中入りをはさんで、この日が 10 回目の結婚記念日と云う生喬が、なかばヤケクソ気味のカミング・アウトから「ちしゃ医者」を。生喬が演ると、医者が好々爺で下男が荒くれ者。最後の肥壺の惨劇はかなりハードに。

 トリは御大・福笑。第 2 回の開催決定を発表。(本気?)
 自作の「絶体絶命」は、田舎道で突然便意をもよおした女性がトイレを借りに入ったガソリン・スタンドで四苦八苦する噺。前半は、悶絶しつつ便意をこらえる女性と、あり得ないほどトボケた応対をする店員が、さながら SM の様相。こまかいクスグリも多し。
 後半はガソリン・スタンドの裏の畑で女性が解放されるも、満天の星空との美醜の対比が凄まじい。独演会ではババ放出音に「バキバキ!ドカーン!」ってなのも混じってたが、今回は想定の範囲内の擬音で、それがまたリアルに‥‥汚い。


 ネタ出しされてましたし、あらかじめ特集とわかってましたが、なんともスゴい会でした。おもしろかったんですけど、なんだか気持ち悪くなってしまいました。

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平穏亭 桂あさ吉お噺会

2007/10/3 @Gallery HAY-ON-WYE

  • 桂雀五郎 「牛ほめ」
  • 桂あさ吉 「The Zoo」
  • 桂あさ吉 「茶の湯」

※ 第 2 回


 ギャラリーでのあさ吉さんのミニ落語会。記念すべき第 1 回には都合で行けなかったんですが、満を持して第 2 回に足を運びました。
 が、お客さんの出足が悪い。開演前はつ離れせぇへんのちゃうかと思いましたが、雀五郎さんの口演中にお客さんが増え、最終的には 16 人に。


 まずは雀五郎が一門の系図や弟子修行の話をマクラに「牛ほめ」を。もうちょっとメリハリが欲しい気もするが、これも雀五郎の味か。ごくごくきっちり丁寧なところには好感が持てる。

 つづいてあさ吉。マクラはニューヨーク公演の土産話。入国審査で持参した布(毛氈代わり?)をチェックされ、「これはなにに使う?」と訊かれて「寒いときに身体に巻く」と答えたところ、納得して通してくれたそう。公演ではスタンディング・オベーションが起こり、どうしたもんかと困惑したとか。
 1 席目は「せっかくですから英語落語を‥‥」と「動物園」の英語版を。舞台設定がより現代的になってるにもかかわらず、主役が KIROKU ってのがおかしい。クスグリのゆるさがあさ吉らしく、のんびりした雰囲気で。
 そのまま 2 席目を演ろうと思ってたようだが、予想以上に喉が渇いたようで、雀五郎にお茶を求めて軽くマクラを振りつつ休憩。ひと心地ついてから「茶の湯」を。これはもう手慣れたもんで、知ったかぶりの御隠居や迷惑をこうむる長屋の連中など、のんびりした風情があさ吉にピッタリ。


 終演後に抽選会。あさ吉さんの海外土産が中心。かなりの高確率でしたが、はずれました。残念。
 プレゼントの T シャツのサイズがなぜかすべて XS で、曰く「綿の質が良く、いちばんの売れ筋」。しかも大柄の男性ばかりに当たると云うミラクル。やっぱりあさ吉さんはおもしろいです。

 なんだかとにかく癒されました。とくにあさ吉さんの「茶の湯」はニンに合ってて、ほのぼの系の噺は何度聴いてもたのしいですね。
 あさ吉ファンとしては、もうちょっとたっぷりのマクラでいろいろおしゃべりしてもらいたいところです。なんやったらトーク・コーナーでも作ってもらいたいくらい。

Gallery HAY-ON-WYE
桂あさ吉@ブログ

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坂口修一 Solo Act Live 『火曜日のシュウイチ』

2007/10/2 @in→dependent theatre 1st

※ Stage 51


 後半戦突入の 10 月は 2 本立ての交互上演。初日の 1st ステージのみ 2 本連続上演と云うことで、やっぱりお得なこの会に行ってきました。(その代わり《土の会セレクション》はありませんが)
 毎月初日の 1st ステージは入りが悪いそうですが、今月はお得な連続上演と云うことで 50 人近くは入ってたと思います。


 この日のメニューは↓こちら。

  • オープニング
  • 『ダイハーダー』
  • 『ダイハーデスト』
  • シュウイチの輪
  • SyuTube
  • 『ミッド・ナイト・エクスプレス』 第 26 話 「さよならシルバーフォックス」
  • エンディング

月替わりゲスト作家作品 『ダイハーダー』
 大阪・日本橋の大型ホビー・ショップを訪れたジョン・マクレーン刑事。突然、そのビルがテロの舞台となり、マクレーン刑事も騒動に巻き込まれる。
[作・演出・振付・声の出演:石原正一(石原正一ショー)]

月替わりゲスト作家作品 『ダイハーデスト』
 閉館が発表された商業ビルの店員がそのビルを占拠。行きがかり上、ジョン・マクレーン刑事はビルの解放に向かう。
[作・演出・振付・声の出演:石原正一(石原正一ショー)]

超短編連続ドラマ 『ミッド・ナイト・エクスプレス』 第 26 話 「さよならシルバーフォックス」
 ことごとくクイズに誤答し、ついにシルバーフォックスは奈落の底へ。(全 50 話)
[作・演出:サシマユタカ]

 とにかく月替わりゲスト作家作品がたのしい!
 映画『ダイ・ハード』をベースにした独自のドラマに、漫画やアニメの小ネタを満載し、それでもそれぞれ 30 分でしっかりストーリーが展開。初演ゆえに混乱したり、ライヴならではのトラブルも発生したが、そんなんもひっくるめて《事件》になってしまってる感じ。
 坂口修一扮するマクレーン刑事もなかなかそれっぽく、ムリヤリ裸足にさせられたり、消火ホースを頼りに飛び降りたりと、元ネタ知ってりゃニヤリの場面も多数。
 オープニングのダンスや、影絵を使った演出もなかなかたのしいが、それにも増してスゴかったのが石原正一の声の出演。「これって一人芝居!?!?」と皆が思ってしまうほど、かなりの量のセリフあり。それでも「おもしろければなんでもオッケー!」と思わされてしまうのもまた、この作品ならでは‥‥かも。

 『ミッド・ナイト・エクスプレス』はお約束の展開。


 『ダイハーダー』『ダイハーデスト』ともに、それぞれおもしろかったんですが、2 本観れば 2 倍以上のおもしろさになると思います。ジョン・マクレーンな雰囲気は出てますよ。

火曜日のシュウイチ
坂口修一の日記

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さん三の会

2007/10/1 @上方亭 (ワッハ上方 小演芸場)

【3 + 3 合同説明会】

  • 三幸・さん都 《ごあいさつ》
  • 桂さん都 「池田の猪買い」
  • 桂三幸 (地球に優しい父親の噺)
  • 桂雀太 「宿替え」
    ―― 中入り ――
  • 《合同説明会》

※ 第 1 回


 三幸さんもさん都さんも、前座で出てるのは何度か観たことありますが、今回のような若手だけで組んだ会だとのびのびしておもしろくなりそうだったんで、行ってみました。
 入りは 30 人弱。この日は『TORII 寄席』が古今亭志ん朝さんの追善企画ですから、真っ当な落語ファンはみなあっちへ行ってたのかもしれません。(失礼)


 派手なオープニング・ミュージックに乗って三幸とさん都が登場。コンセプトが《プレゼンテーション》と云うことで、ふたりともスーツ姿。(着物でプレゼンもできると思うが、おそらく企業の説明会をイメージしてると思われる)
 さん都によると『さん三の会』は『さんざんのかい』と読むそう。三幸は「やっぱり、そう読むん?」って、知らんかったんかい!

 着物に着替えて、まずはさん都。「みかん屋」率が高いと指摘されてることから、なかばヤケクソ気味に《「みかん屋」は演りません》宣言。ひさしぶりと云う「池田の猪買い」を。ネタはきっちり入っているが、やはりこなれていない場面も。汗をかきかきの熱演。

 つづく三幸は自作の新作ネタ下ろし。環境問題にうるさい機械音痴の父親について、母親と息子があれこれ思いめぐらせる‥‥って噺。時事ネタをクスグリにいろいろ盛り込んで、笑い多し。整理されれればもっとテンポが出て良くなりそう。

 ゲストの雀太は、マクラ代わりに三幸とさん都についてのプレゼンテーション。さん都は落語に出てくる喜六のような男で、失敗談多し。三幸は‥‥特になし。
 自身の引っ越しの話から「宿替え」へ。枝雀の型で、新しい長屋へ荷物を持っていくところから。きっちり丁寧にたっぷりと。

 中入りをはさんで、合同説明会。三幸とさん都はスーツ姿だが、ゲストの雀太は私服で。(ここらは統一しといた方がおもしろいのに)
 さん都の進行で、自分のこれまでの人生の浮き沈みを折れ線グラフで紹介したり、それぞれの一門の特長を紹介したり。ネタはたっぷり仕込んでるのに、段取りの打ち合わせが不十分で、わちゃわちゃして思い通りに進まない。しかも進行のさん都を三幸と雀太がイジりまくるもんで、時間がなんぼあっても足りない。どんどん押して 21 時半ギリギリになり、ムリヤリ終演宣言してバレ太鼓が鳴るなかで高座のバラシが始まると云う、なんともグダグダなエンディング。


 予想どおり、おもしろい会になりました。なんと云うか、とにかく最後の企画コーナーがグダグダで、それがまたおもしろかったです。あとが盛り沢山なのに「池田の猪買い」みたいな長いネタを掛けてしまうさん都さんは、やっぱり天然ボケなんでしょうね。ボケのさん都にツッコミの三幸と云うコンビもなかなか。
 それに加えて、ゲストの雀太さんがまたおもしろい。落語はきっちりですし、マクラやトークもなかなか。ちょっと気になってきました。

 次回は 3 月 1 日の予定、また『TORII 寄席』の裏です。

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