上方寄席囃子 林家トミの記録
2007/12/12 @国立文楽劇場 小ホール
【文化財保護委員会作成の音声資料をめぐって】
- 無形文化財「上方寄席下座音楽」の位置
飯島満(東京文化財研究所) - 上方落語と寄席囃子
荻田清(梅花女子大学) - 林家トミの記録(1) 出囃子・はめもの
- 上方寄席囃子の人々 林家トミを中心に
豊田善敬(郷土史・芸能史研究家) - 林家トミの記録(2) 芝居噺
- 寄席囃子について 落語『軽業』解説
石川裕美子(寄席囃子方) - 落語『軽業』より 桂吉朝
※ 第 2 回 東京文化財研究所無形文化遺産部公開学術講座
とある会で落語ファンの方らかチラシをもらって流し読みはしてたんですが、吉朝ファンの某 C さんに指摘されてビックリ! 囃子方の林家トミさんに関する講演会なんですが、プログラムの最後に《桂吉朝》の名前が! こらもう、ファンとしては行くしかないでしょう。
で、いろいろ情報発信してから思ったんですが、プログラムには「落語『軽業』より 桂吉朝」と書かれてるだけで、どこにもビデオ上映と書かれてない。さらに、表記の《より》が気になる。「軽業」はハメモノがふんだんに入るが、ひょっとするとそのハメモノの入る部分だけの抜き出したものを観る(あるいは聴く)ことになるかもしれない。
‥‥とまぁ、いろいろ考えても仕方ないですし、ちょっとでも吉朝さんの芸に触れられるのならと、とにかく行ってみました。
入場無料で先着 150 名と云うことでちょっと早めに行ったつもりが、すでに 20 人以上は列ばれてました。落語好きの方々に混じって噺家・囃子方・作家・研究者の姿も。行列からしてかなり濃い空間です。
そんなワケで、座席はほぼ満席。
宮田繁幸(無形文化遺産部長)氏の司会で、各講演とも 20 分割りで進行。講演会の詳細は wakadoshi さんのブログ記事 をご参照ください。
興味深かったのは、上方寄席下座音楽が《記録作成等の措置を講ずべき無形文化財(いわゆる「記録選択」)》に指定され、囃子方の林家トミの記録に若かりし頃の松鶴や米朝が参加してたことでしょう。録音がおこなわれた昭和 39 年(1964 年)と云う時代を考えれば、当然と云えば当然なんでしょうが。惜しむらくは、おそらくその当時は記録用テープが高価なもので、落語を丸々録音するのではなく、ハメモノの入る部分だけしか録音されていないことでしょう。噺全体の流れのなかで、どのような場面で使われるのか、と云うことも研究材料としては必要かと思うんですが、こればっかりはどうしようもないですね。
その録音テープには、橘ノ圓都「掛取り」「稽古屋」「片袖」、桂米朝「こぶ弁慶」「土橋万歳」「番部屋」、笑福亭松鶴「天王寺詣り」「網舟」「三十石」「月宮殿星都」の、それぞれ一部分が収録され、それを起こしたものがレジュメとして配布されました。実は「はめもの噺について」と云うテーマでおこなわれた、林家トミ・笑福亭松鶴・桂米朝・三田純一による座談会も録音されてたそうなんですが、こちらは省略。落語ファンとしてはこっちの方が気になったかも。
「軽業」におけるキッカケとハメモノの解説のあと、いよいよ吉朝さんの「軽業」。ビデオ上映でひと安心。平成 13 年 4 月 6 日に東京国立文化財研究所実演記録室にて収録されたそうで、若干のお客さん(研究所員?)も入ってるんで、ビデオから拍手や笑い声も。下座は、三味線に大川貴子、鳴り物に桂米左・桂あさ吉・桂よね吉。
前座がおそらく『東の旅』の「発端」「煮売屋」「七度狐」あたりから演られたのを受けて、マクラを振らずすぐさま「軽業」へ。ハメモノ入りのにぎやかな古典をきっちり軽妙な口跡で。記録用に取られたと云うことで、映像は真っ正面に据えられたカメラからのもののみで、実際の高座を観てるような錯覚に。
ええもん観させてもらったと云うのが実感です。
前座さんの口演は調整用で記録されてないかもしれませんが、「軽業」のあとに「蛸芝居」も収録したそうです。さらに、下座音楽の記録ですから、おそらく舞台横から演者と下座をいっしょに納めた映像も残ってるんじゃないかと思います。一般公開を前提に収録していないため、著作権の絡みで一般公開に際して難しいところもあるようですが、そう云った映像もなんとか公開していただきたいです。
記録物のデジタル化は進められてるでしょうから、吉朝さんの録画だけでなく、先の松鶴師匠や米朝師匠の録音なんかも、東京文化財研究所を訪れれば閲覧できるようにしていただくとか、保有資産の国民への還元も検討していただきたいです。
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