工業高等専門学校(高専)は高校と短大が合体したような 5 年間一貫教育による工学系の学校で、こと数学に関してはかなり高度なところまで学ばされます。と云うのも、専門教科で必要となる数学理論・技術を早い段階から身につけておく必要があるからで、微積分なんかは専門教科の授業で「意味はそのうち数学で習うから、とにかくやり方だけ覚えなさい」ってな感じで無理から覚えさせられました。
4 年生くらいになるといろんな定理の証明なんかも出てきて、講義を聴いてると高い山頂に向かってスーッと道が見えてくるような、目の前の霧がスーッと晴れてくるような、なんとも心地良かったのを覚えています。
大学に編入してから、どこかで「フェルマーの最終定理が証明された」ってのは耳にしてましたが、「なんかスゴいな」とは思ったものの、そのときはとくに調べるまでもなく過ごしてしまってました。
で、この 『フェルマーの最終定理』 を書店で見かけたのが今年の 6 月くらい。帯タタキの「『博士の愛した数式』副読本。」には「ちょっと違うやろ?」と首を捻りつつ、どのような過程で証明されたのか興味があり、読んでみようと思って買いました。
まず、フェルマーの最終定理をご紹介。
【フェルマーの最終定理】2 より大きい自然数 n (3, 4, 5, ‥‥) について,
xn + yn = zn
を満たすような 0 以外の自然数の組み合わせ (x, y, z) は存在しない.
定理自体は非常にシンプルです。ただ、これがフェルマーの残したメモに「余白が狭すぎるのでここに証明を記しことはできない」とだけ書かれていて、以来 300 年以上証明されずにいたと云うものです。
似たような定理に、ピュタゴラスの定理があります。
【ピュタゴラスの定理】直角三角形の斜辺の長さを c とし,残りの 2 辺の長さをそれぞれ a , b とするとき,
a2 + b2 = c2
となる.
これは小学校か中学校で習う定理です。この定理はどのような直角三角形に対しても成立し、さらに (a, b, c) の組み合わせが自然数となるものがあることも知られています。(たとえば (3, 4, 5) (5, 12, 13) など)
シンプルなのに証明できないと云うことで多くの数学者を魅了してきたフェルマーの最終定理が 20 世紀末、すなわち我々の生活している今の世の中で証明された、このことだけでもなんだかワクワクしてきませんか?
この本では、まず前半で数学を取り巻く歴史をおおまかにたどりながら、後半でフェルマーの最終定理が証明されるに至った歴史をつぶさに紹介されています。そのなかに日本人も登場し、世界の歴史に日本も貢献したんだなぁあと思うと感慨もひとしおです。
ときおり数式も出てきますが、難しい証明の内容、とくにフェルマーの最終定理に関しては、ごく簡単にとどめられています。それよりも、証明に関わった人々、とりわけ最終的に証明を完成させたアンドリュー・ワイルズのドラマにスポットが当てられます。証明の内容はわからなくとも、それが徐々に構築されてゆく様は圧巻で、この本のクライマックスとなっています。
フェルマーの最終定理が証明されたあとの数学界については、余談のようで、しかも後味の悪い内容でもあり、ややダレ場にも感じられますが、それだけフェルマーの最終定理の証明が崇高な業績だっんだと云えるでしょう。
数学嫌いの方にはオススメできませんが、そうでない方にはぜひ読んでいただきたい 1 冊です。とくに理系出身の方には興味深く読めるのではないかと思います。
で、帯タタキの「『博士の愛した数式』副読本。」ですが、本文中に完全数に関する解説があって、あながち違うとも云い切れんかなぁ‥‥とは思いました。
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